Lovely Trip

【第16章・・<決死のヒッチハイク>】

今後の桃ちゃんの話だが、彼は明日の朝、7時発のバスのチケットを購入していた。行き先はマンダレー。しかし少し問題がありバス停はこの場所から数十キロ先にあるとのことである。彼は残り2週間ミャンマーに滞在する予定だが(帰りのチケットがFIXのため)残金が50 ドルしかないのだ。少しならあげるよと言ったのだが、あまりもらいたがらない。恐らく自分の力でなんとかしたいのだろう。その気持ちが解らないでもないので、3人で解決策を考えていた。

方法としては次の数通りがある。
1:ピックUPバスに乗り、隣町のバス停まで向かう。バス停で12間ほど待機、150チャット(時間的にほぼ絶望的だと思われる)。
2:夜出発してタクシーでバス乗り場まで 4000チャット。
3:もう一泊して朝タクシーでバス乗り場まで 4000チャット+2ドル(宿の従業員が同情してくれてオーナーに値段交渉をしてくれた。その結果3ドルを2ドルにまけてくれたのだ)。
4:ヒッチハイクで行きバス停で待つ 0円。
5:これはそれぞれに付くオプションだが向こうで泊まった場合最安値で3ドルの宿があるらしい。正直外も寒いしかなり迷っていたが、桃ちゃんは期待通り4のヒッチハイクを選んでくれた。何て素敵な人なんだろう。

私たちの一大プロジェクトは始まった。宿の皆は絶対に無理だと言う。この時間帯はたとえミャンマー人でも難しいらしいのだ。
午後9時過ぎに町の入り口にある唯一の門にたどり着いた。何人かのギャラリーも集まり皆好奇心いっぱいで私達を眺めている。まんざらでもねーな。

目的の場所までは、門から1本道で、約10マイルあるらしい。いろんな人に聞いてみるが不可能としか言われない。理由の1つには23時~3時の間はパミッションがないと通れないとのこと。どこまで本当なのか怪しいものだが。

私とボーズは既にあきらめモードで彼が歩く際に使うたいまつ作りに励んでいた。この10マイルの道は1本道らしいが電灯が全くないのだ。不運なことに月さえ出ていなかった。長い木と布、葉などを絡めなかなか立派なたいまつが出来上がった。試しにつけてみると何とも立派に燃える燃える。1本じゃ足らないだろうから私たちは何本か作っていた。何だかとても楽しい。なんといっても、こんな馬鹿げた冒険に出るのは自分ではないのだ。人ごとって素晴らしい。

何人もいたギャラリーはとっくに家路につき、残っているのは17才の少年1人。彼は何とも頼りない顔をしていた。英語は話せないが、周りにいたミャンマー人に話を聞いたらしく、私達が何をしたいのかはおおむね理解していたようだ。そして恐らく日本人だけでは無理だと思ってくれているのか、既に真夜中ではあったが、私たちのそばから離れようとはしなかった。

既に4台の車が通り過ぎ、全く話を聞いてくれない。その時17才の少年が「次は俺にまかせろ!」とばかりに、自分のサンダルをケツにひき道路の真ん中で体育座りを始めた。頼もしい。恐らくあの時間帯彼は抱かれたい男TOP10には入っていたと思う。30分後久しぶりのトラックがやってきた。私たちは固唾を呑んでその様子を見守る。彼が助手席に向かって行ったが、車は速度を落とすことなく、行ってしまった。彼は振り返り一言「NO~」、穏やかな桃ちゃんでさえ「ありえねー、ありえねー」と悔やんでいた。
途中ラリったギター弾きが現れ、みんなで聞いたことのない歌を合唱した。自称ギタリスト桃ちゃんがギターを弾き出したが、3コードでさえ全く引けず、その場をこれでもかと言わんばかりに盛り下げてくれた。ボーズはもう帰りたそうだった。


北海道出身 通称ボーズ。

4時間以上が経ち、桃ちゃんも歩く気になっていた。お開きムード一色の中大型ダンプがやってきた。次のネゴシエーターは私だ。恐らくこれが最後のチャンス。なんとしても決勝点を決めたい。

私は道の真ん中で、渾身の力でドアを叩いた。幸いにもドライバー以外にもう1名乗っていたのだ。私はすかさず、助手席側にまわり、声を掛け、ドアを叩いた。その結果なんとかダンプを止めることに成功したのだ。懸命に話しかけ、説明するがいかせん言葉が通じない。ドライバーがエンジンを再びかけ始めた時、17 才の少年は抱かれたい男世界1位に君臨した。ドライバーに向かって、大声で叫び、ヒッチハイクokを勝ち取ったのだ。私達は興奮していた。桃ちゃんはあせり、バックをひっくり返し、暗闇に中身を全て出してしまった。許された場所はダンプの荷台で、そこには大量の砂と砂利が引き詰めらているようだった。非常に高く、右端の梯子を登り、私達は下から荷物を投げ入れた。桃ちゃんはバックを忘れて、右手にはmade in hand のたいまつを持っていた。 「桃ちゃんたいまつもういらないからー」別れの余韻timeはもちろん与えられず、慌ただしく暗闇に消えていった。暗闇から「バイバイ」という声とともに。


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